身に覚えのない通知に書かれた“訴訟”という言葉に慌てないで
更新日:2021年2月18日
最近の架空請求は、法律用語を散りばめて不安をあおり、裁判取り下げ最終期日を定めて連絡を促すものが主流です。従来のハガキに加え、より不安を高めるために封書による通知もみられます。
「裁判所から届いた通知を無視して放っておくと大変なことになる」という情報をなんとなく聞いたことがあるものの、訴訟等の法的手続がどのようなものかまでは知らない人が多いことにつけ込んで、封筒の表に「重要書類在中」「重要」「特別送達」などと印刷したり、差出人として弁護士や裁判所の名前を使ったりするなど、いかにも本物の法的な通知だと勘違いさせるようなものもあります。
聞きなれない“民事訴訟”や“強制執行”などの言葉に驚き、つい慌てて連絡をしてしまう人も多いようですが、冷静に文面を見直すと、具体的な請求内容が分からないような書き方をしています。内容に心当たりがない場合、無視して様子をみましょう。
本来の裁判所の対応
- 裁判所は原告側の言い分のみで判断することはない
架空請求の通知には「このまま連絡のない場合は裁判所に出廷となり、原告側の主張が全面的に認められます」というような内容が記載されていますが、そのようなことはありません。あなた(訴えられた人)には、あなたの言い分を書面や口頭で裁判所に伝える機会が与えられます。 訴えを起こされた場合、まずは裁判所からあなた宛に、誰がどのような訴えをしているのか、そして、今後あなたがどのように裁判所に言い分を伝えればいいのか等の書類が届きます。それにもかかわらず、あなたが裁判所に言い分を伝えないままでいると、相手の主張通りの判決が出て、給与や財産の差押え等をされる場合があります。このことが「裁判所から届いた通知を無視して放っておくと大変なことになる」との情報の根源です。要するに裁判所から書類が届いたら、その指示に従って、あなたの言い分を主張すればいいのです。 - 上記の裁判所からの書類は「特別送達」で郵送される
訴えを起こされた場合、まずは裁判所から「特別送達」という方法で書類が届きます。
特別送達とは、裁判所が「支払督促」や「少額訴訟の呼出状」などを送る場合に利用する特別な郵送方法で、原則として郵便職員が名宛人に手渡します。その際には「郵便送達報告書」に受取人の署名または押印が必要です。ハガキや普通の封書のように郵便受けに投げ込まれることはありません。ただし、裁判所からの通知だと勘違いさせるために、架空請求の封筒の表に「特別送達」と印刷されている場合もあるのでご注意ください。
本物の特別送達は、「郵便送達報告書」に署名か押印を求められるので、裁判所からの本当の通知であるかどうか見分けるポイントです。 - 「出廷」は恐れるようなものではない
「出廷なんて恐ろしいから急いで裁判の取り下げをしなくては・・・」と思う人もいるかも知れませんが、いわゆる「出廷」とは、裁判所から呼び出された期日に裁判所に出向くことです。裁判所があなたを呼び出すのは、あなたの言い分を聞くためです。そこで自分の言い分を主張すればよいのです。裁判所はあなたの言い分をきちんと聞いて、訴えた人(原告)の主張とあなたの主張のどちらが正しいかを判断します。 - 慌てて「裁判取り下げ」をする必要はない
そもそも裁判所は個人間などのトラブルを法律に基づき解決したり、犯罪の疑いがある人が有罪か無罪かを判断したりすることにより、国民の権利を守り、国民生活の平穏と安全を保つための機関です。訳の分からないことを言っている相手と当事者間で話し合うよりも、裁判所を介して解決を図った方がずっと安心。裁判を起こしてくれた方が好都合です。
実際に訴えを起こされた場合は、前述の通り、裁判所から特別送達で通知が届きます。その通知を見て、相手がどのような訴えをしているかを確認してから、今後どうするかを考えればいいのです。 - 「訴訟」は脅しの常とう句
訴訟等の言葉が頻繁に使われていますが、架空請求をするような悪質業者が訴訟を起こせば逆に自分たちの悪事がばれる可能性が高く、実際に訴訟を起こすことは通常は考えられません。訴訟や裁判は脅し文句です。
「もし裁判を起こされたら、裁判所からの通知を確認してから今後の対応を考えよう」とゆったりと構えていれば大丈夫です。